新聞の見出し語に現れた日本語略語を 通じて見た社会像

Abstract

本稿は、現在まで積極的な研究対象ではなかった新聞の見出し語に現れた日本語略語と、その社会との関連性について考察した研究である。考察の際は、見出し語に出現した略語を月別․部門別․語彙別特徴といった3段階に分けて考察を進めたが、その過程で下記の五つのことが明らかになった。一. 略語の月別․部門別․語彙別特徴の分析を通じて当時その社会の社会像をある程度類推することができる。二. 略語の月別․部門別․語彙別増減は、当時の社会的な出来事や事件などと密接な相関関係が見られる。三. 部門別に出現する略語の中には、「デモ」や「テロ」など特定の部門に集中して出現する略語も多数見られる。四. 新語が略語として定着する過程は、「新語の登場→略語の登場→新語と略語の併用→略語のみ使用」の過程で定着していくと言える。五. 略語の形成には、発音上の便利さやモーラなども欠かせない要素として作用していると言える。社会的状況による新たな略語の生成を通じて日本人の言語意識まで考察しようとする本稿の新たな試みは、これから日本語略語を研究する人においても有意義な資料となることが期待される。